日記

日記

2018.5.2 曇り雨

夜行バスに乗ると独特の寂寥感がある。沢山の知らない人たちと暗い車内で寝付けもせずに自分は何をやっているんだろう。目的地に着くとそんな気分も落ち着く。

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京都は曇っているが思ったより寒くなかった。すぐに電車を調べる。目的地までの移動時間を甘く見積もっていた。日本海側に行くのは大変だ。現地での滞在時間は二時間程度しか取れないだろう。目的地の最寄りのバス停が分からずジョルダンのスポット検索でルートを出す。今すぐ電車に乗っても四時間半ほどかかる。駅の中のキオスクも開いていないので朝食は諦める。夜行バスに乗る前に買ったソルティライチがあるのでなんとかなるだろう。GWだが一応平日の早朝なので席に座って移動できる。そもそも人の少ないところへ行こうとしているので祝日でも変わらないのかもしれない。電車とバスを乗り継いでジョルダンで出てきたバス停で降りるが、よく見たらここからさらに徒歩二十分と書いてある。

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バスは自分が歩く予定の方向へ走っていったので本来の最寄り駅はもっと先立だったらしい。マイナーな駅は登録されないのか自分の検索能力の低さか。仕方がないので歩く。右手に海が見える。

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バスに乗っているときから海は見えていて、移動中に海が見えると気分がいい。空は薄曇りで昼から雨の予報。歩くのにはちょうどいい。この辺に独特の建築を見ながら歩く。予定外に長く歩かされることになったがそもそも散策するつもりだったし気落ちせずに済んだ。舟屋というものを知ったのはいつだったかもう覚えていないが十年ほど前だったかもしれない。家が海と繋がっていて船が係留してある。初めて見たのはテレビだったかインターネットでだったか、とにかくとてもいい住居だと思った。絶対に見たい、住みたい。

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家の中に海が引き込まれているなんてなんて素晴らしい思い付きだろう。海面は不定形で満ちたり引いたりするたびに家の輪郭があやふやになる。しかも、そこから船で海に出ていけるなんて…。海が荒れたら家はどうなってしまうんだろうか。舟屋は湾の中に建っているのでそんなに心配しなくていいのかもしれない。倉なども建っている。漆喰の鏝絵で屋号?家紋?が施されている。昔からの家が残っているのを見ると嵐の心配はそれほどないのだろう。色々見ていると目的地はすぐだった。舟屋で台湾茶が飲める店だ。看板がなければ見逃すだろうし、あっても事前に知らなければ臆病な自分は入るのをためらう一見普通の民家タイプの店だ。しかも中が見えない。この店はTwitterで見つけた。いつか行きたいと思っていた舟屋の中に入ってお茶が飲める、ということはゆっくり見学できるわけで大変ありがたい。とにかく時間がないので迷うことなく引戸に手をかける。声をかけたが誰も出てこないのでそろそろ中に入ってみると先客が一組お茶を飲んでいたので安心する。しかし店の人はどこにいるのかわからないのでもう一度「すいませーん」と声をかけてから適当な席についた。しばらくすると店主と思われる人がやって来て「どんなお茶がいいですか」と聞かれる。専門店にたまにあるメニューがないタイプの店だ。台湾茶の知識はゼロなので茶葉の名称はわからない。「さわやかなのを…」と伝えると店主が選んでくれるらしく奥へと戻っていった。去年の春の烏龍茶をいただく。

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茶葉と小さい急須と小さいコーヒーポットのようなものと茶漉しとワイングラスのようなものと湯呑み等がセットされ、戸惑っていると「一煎目は入れましょうか」となって、お任せする。茶葉三グラムを上戸のようなもので急須に全部入れてお湯を注ぎはじめてから四十秒でポットに移す。ポットに移したものを半分ワイングラスに移してまたポットに返す。ワイングラスはお茶の香りを確かめるためのものだった。十五分ほどかけて香りが変化していくらしい。烏龍茶は冷めた方が味が膨らむので熱いうちに飲んでみてまた少し待ってから飲んで比べるとよいとのこと。何度でもお茶を入れられるが二回目はお湯を注ぎ初めてから十秒、三回目は八秒、四回目は十秒、そのあと十三秒、十五秒、十八秒…となる。四回目以降はほとんど渋味が出ないのでお湯を注いでからの秒数は好みでもよいが四回目までは厳密にやらないと渋くなってしまう。という説明を聞いてお茶を飲む。確かに爽やかだ。香りを確かめるためのグラスには甘い匂いがする。お茶本体とは香りが全然違う。時間が経つごとにグラスの香りは甘く華やかになった。お茶は最初はすっきりあとの方はやわらかい口当たりになった。一時間ほど海を見ながらお茶をのみ続けた。先客はすぐに帰った。店主と少し話す。私が今住んでいるところにわりと長く住んでいたそうでおすすめの定食屋とバーを教えてもらう。今もあるのかわからないが探してみよう。伊根がこんなに遠いと思わなかったという話から和歌山の交通事情の話をすると十津川の温泉に行ったことがあるそうで(おそらく上湯川)こういう場所で台湾茶の専門店を営むだけのことはある(僻地に行くのを厭わない)、という納得感。もしかしたら実家なのかも知れないが、移住だとしたらどうしてここに住もうと思ったのか、どうやってこの場所に住めたのか聞きたかったが話の流れでそこまで立ち入ることができなかった。帰り際にまた来るときは泊まりで来るつもりだと言うと宿がなかったら相談してくれと言われたので覚えておこうと思う。

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